失敗しないSDGs経営導入の仕方
持続可能な開発目標(SDGs)が国連で採択されてもうすぐ7年が経とうとしています。
SDGsの認知度は85%を超え、行政や金融機関に加えて一般消費者からも社会的に価値のある企業はどこか?SDGsに貢献している企業はどこか?という視点を持ち始めています。
大企業をはじめ、中小企業へもSDGsへの対応が求められる中、どのように始めたらよいか、失敗しないためにはどうしたらいいか、を簡単にご紹介します。
1. SDGs経営を導入するメリット
まず初めに、改めてSDGsを経営に導入することのメリットを紹介します。
大きく分けて「社会のメリット」と「企業のメリット」の2つがあり、この両方を同時に受け取ることができるのが最大の特徴ですね。
逆に言えば、これらのメリットが受け取れていないということは、次の章で示すSDGs経営の落とし穴にはまっているとも言えます。
① 社会のメリット
これは言うまでもありませんね。
SDGsは世界中の社会課題を解決するために設定された17のゴールと169のターゲットからできています。企業が経営を通してSDGsに取り組むということは、これまでNGO/NPOや行政が中心となっていた社会課題解決を急加速させることになります。
カーボンニュートラルやプラスチックごみの削減といった環境課題や生物多様性の課題はメディアで報道もされていますし、新型コロナウィルス感染症やロシアーウクライナ戦争により直近では人権デューデリジェンスについても多く取り上げられるようになりました。
これらの社会課題が解決された未来とは、誰一人取り残さないというSDGsが目指す理想の社会そのものではないでしょうか。
② 企業のメリット
社会のメリットだけではなく、企業のメリットも当然あります。
さらに言えば、資本主義的に経済発展が進んだ今の時代では、企業側にメリットこそがSDGs実現にむけた起爆剤であり目標達成に向けた重要な要素であると言えます。
企業がSDGsに取り組むメリットには以下の3点が挙げられます。
・中長期的な目線を持ち、継続的に企業の価値を生み出すことができる。
・消費者や採用、取引先などのステークホルダーから選ばれる存在になる。
・資金提供者の信用を獲得し、選ばれる企業になる。
まず、自社が目指す理想の社会や事業活動の意義(=パーパス)をしっかりと考えることがスタートです。視座を高め、中長期的にチャンスやリスクを見極め、適切なリソース配分と事業活動を行うことにつながります。
足元を固め、未来を見据えた経営は強靭であり柔軟でもある、時代に適したビジネスを行うことが可能です。それにより、消費者や採用、取引先などのステークホルダーから選ばれ続け、その価値を認められるでしょう。
2. よくあるSDGs経営の落とし穴
大企業を中心に多くの企業がSDGsへの取り組みを始めています。
しかし、いまいちメリットを感じない、という企業も同じように増えて来ているのではないでしょうか。これにはある意味日本人だからこそと言っても過言ではない落とし穴があります。
① これまでの経営そのものがSDGsである
⇒SDGsアイコンを貼り付けて終わり
事業規模に関わらず、歴史の長い企業では特に陥りやすい落とし穴がこれです。
近江商人の「三方良し」をはじめ、日本の経営者は常に地域とともに発展をしてきています。また、1970年代のオイルショックや1997年の京都議定書などを受けて、人権・環境・地域を考慮した経営を行ってきた企業も多い事でしょう。
それ自体は何も否定されるものでもなく、素晴らしいことだと私は考えています。
しかし、そこに満足して自社の既存事業とSDGsのゴールを紐付けする(ラベリング)に留まっている企業が多くみられます。
自社の既存事業とSDGsのゴールの紐付けはSDGs経営の第1ステップであり、いわば入口に立った状態と言えます。今一度、自社の目指す理想の社会や事業活動の意義(=パーパス)を定義し、より野心的でチャレンジングな目標を定め、変革(イノベーション)を創出することを期待されています。
② 自社の商品・サービスは「良いもの」である
⇒効果や影響を正しく評価できていない
「働く」の語源は「傍(はた)を楽にする」とも言われているように、誰かが困っている、求めている商品・サービスを多くの企業では提供しています。市場が求めている商品・サービスだから社会課題解決に貢献している!と考え、SDGsのゴールに当てはめて力強く宣伝されていることが良くあります。
しかしその実態は、関連性をあまり評価できていなかったり、取組そのものが不十分であったりと、真に課題解決を求める人から減滅される場合があります。また、一方には良い事でも他に悪影響を及ぼしていたり、噓ではないけど合致もしていない誇張表現の事例もあり、SNSがバッシングを受けることにつながります。
これらはSDGsウォッシュと言われ、この企業は表面上しか見ていない。という厳しい評価を社会から受けることになります。インターネットの普及により、意図的であるかどうかに関わらず情報は世界中に広がってしまいます。
3. 失敗しないSDGs経営とは?
ここまででSDGsを経営に取り組むメリットや日本企業ならではの陥りやすい落とし穴について触れてきました。
たくさんの中小企業経営者の方々にお話を伺っておりますが、どの経営者様も社会への想いがあり、地域や従業員のために頑張っている方々ばかりです。そんな企業がSDGsに興味を持ち、経営に取り入れていくこと自体素晴らしい事です。
だからこそ次の点を考慮して、流行りとしてのSDGsではなく、次世代へとつなぐ大人の責任として、真のSDGs経営を実践していってほしいと思います。
① バックキャストの視点を持つ
失敗しないSDGs経営のコツ1つ目は「バックキャスト(※)の視点を持つ」です。
バックキャストで考えることで、過去の実績や現状に捉われず、未来にフォーカスすることができます。VUCAを呼ばれる先行き不透明な時代ではありますが、野村総研や生活総研(博報堂)が未来年表として様々な情報をまとめたサイトを公開しており、この先、どんな時代になるのか予測する手助けになります。
未来年表を参考に、この先求められる企業となるためには?自社の強みを生かして解決できる社会課題はないか?を深掘りし、目指す企業像を作ってみましょう。
未来にフォーカスすることで、単なるラベル張りではなく、課題解決に向けて挑戦し続ける企業活動を行うことができます。
※バックキャストとは 現状の延長上を考えるのではなく、自社の想う理想の未来を描き、そこに向けて今行うことの優先順位を考えていくこと
② 事業活動の影響(インパクト)を評価する
2つ目のコツは「事業活動の影響(インパクト)を評価する」です。
弊社が実際にSDGs経営の伴走支援させていただく際にも活用しているのが、バリューチェーンマッピングです。事業活動の流れを可視化し、その活動によってプラスの影響はなにか?逆にマイナスの影響を発生させていないか?を確認します。
その上で、プラスはよりプラスに、マイナスは出来るだけ小さく。
この整理をすることで強みとなるポイントや改善点などが明確になり、PDCAサイクルの回転を速めることもできます。
③ 自社の取り組みを発信する
最後のコツは「自社の取り組みを発信する」です。
これまで紹介した2つのコツ「バックキャストの視点を持つ」と「事業活動の影響(インパクト)を評価する」を実践することで、社会に求められる企業像に確実に近づくことができるでしょう。
しかし、実はここにきてもう1つの落とし穴があるんです。
それは、「自社の存在に気付いてもらえない」という落とし穴です。
第4次産業革命ともいわれる情報社会では、インターネット上に把握しきれない膨大な情報が日々流れています。WebサイトやSNSを中心に自社の取り組みをアピールしないと、せっかくの商品・サービスに気付いて貰うことはできないのです。
良い商品・サービスや企業の取り組みを発信することは、何も自社のためだけとは限りません。
悩みを抱え、解決方法を探している潜在顧客や、社会価値の高い企業への就職を考えている方などのニーズに応えてあげられるのです。情報が多いということは、消費者からすれば本物を探すことが難しいということですので、しっかりと情報発信を行い必要な方に届けてあげるのも企業の責任と言えるでしょう。
4. まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
SDGsの認知度が向上するにつれて、企業側もSDGsへの意識を高めているということは素晴らしい事です。しかし、その中には単なる流行り、アピールとして使われていることも少なくありません。
真のSDGs経営を取り入れ、社会的価値と経済的価値の両立を図る。SDGsはVUCA時代の経営戦略における羅針盤となるでしょう。
本Webサイトでは自社のサステナビリティ度合いをセルフチェックできる無料サービスもご用意しております。気になる方はぜひやってみてください。
https://palette-sdgs.org/self-check/
この記事へのコメントはありません。