中小企業がSDGsに取り組む理由
SDGsは社会貢献であり、政府や大企業、非営利団体が行うものである。そう考えてはいないだろうか。SDGsを経営に取り入れるということは「自社の目標と社会の目標を近づけること」であり、サステナビリティ経営を行うための羅針盤となる。
また、「誰一人取り残さない」を体現するためには、地域社会を支える中小企業の存在は必要不可欠である。
SDGsは経営の羅針盤
中小企業と地域をつなぐSDGs
中小企業の製品、サービスは地域に住まう人々の生活を支える重要なものであり、また、地域の人々は雇用され、地域社会にとっても必要不可欠なものである。
SDGsというレンズを通して地域社会を見ることで、地域社会が抱える課題や人々のニーズが見えてきます。また、他の地域でも同じような課題に対して取り組みを行っている場合は協力を仰いだり、自社のサービスとして自地域へ提供することも可能です。
どれだけ良い製品、サービスであったとしても、それを必要としている人々に届かなければ意味がありません。行政や大企業だけでは手の届きにくい地方地域にまで届けられるのは中小企業しかありません。
地域社会に寄り添うことは中小企業のサステナビリティ経営に向けた第一歩といえます。
中小企業と世界をつなぐSDGs
SDGsの採択から5年、世界での認知度は74%に上ります。
欧米や中国を中心とした先進国がもつ社会課題、アフリカや東南アジアなどの開発途上国がもつ社会課題、世界を取り巻くすべての課題がSDGsにつながっています。
自社の製品・サービスをSDGsと照らし合わせることで世界中のステークホルダーに対しアピールすることが可能になります。
テクノロジーの発展により国境のハードルは年々低くなっています。SDGsは企業と世界をつなぐ「共通言語」として、大きな役割を果たしてくれます。
中小企業と未来をつなぐSDGs
SDGsは2030年までの世界のあるべき姿を示しています。
また、SDGsを経営に取り入れるにあたって重要な考え方のひとつに「バックキャスティング」というものがあります。「今できること」の延長線上に将来を予測するのではなく、この将来の「あるべき姿」から逆算して「今何をすべきか」を考える方法です。
SDGsが示す将来のあり方とは何か、その社会にとって必要とされる事業は何なのか。
単に既存事業にSDGsのラベルを貼るにとどまらず、100年先を見据えた真の未来志向こそサステナビリティ経営の本質と言えます。
SDGsによるリスク
世界全体がSDGsの達成を目指す中、2021年を迎えSDGs達成に向けた行動の10年が始まりました。
これまでは社会への普及が主だった活動が、具体的にSDGsの17ゴールそれぞれにフォーカスされ、より定量的な評価が行われることは間違いありません。
つまり、SDGs達成に寄与する活動は今まで以上に評価されることとなるでしょう。逆に言えば、SDGsを無視して事業活動を行うことはそれだけで企業の存続リスクとなり得る環境を作り出すこととなります。
「2030年代半ばにガソリンのみを燃料とする自動車の販売を禁止する」「2050年カーボンニュートラルの達成」など、主に環境問題に対応する宣言を日本政府が打ち出しています。
実現の見通しも根拠もなく国のトップが世論のために無謀な宣言をしていると軽視することは簡単です。ですが、今世界は「できる」か「できない」ではなく地球そのものを持続可能とするため本気でこれらの目標に向かって進んでいます。
また、SDGsネイティブとも呼ばれる10代20代の若い世代を中心に、環境や社会への影響を無視した大人達の対応に問題提起することも増えてきています。
政府を、社会を、そして若い世代を味方にできなければ決してサステナビリティな経営はできません。
中小企業だからこそ出来ることがある
大企業にはできないスピード感
大企業と中小企業、その名の通り大きな違いはその規模であるといえます。組織規模の大きさはそっくりそのまま組織のトップと従業員との距離感につながります。
SDGsやサステナビリティの考えを経営に取り込む場合、少なからず組織の変化が必要となるでしょう。社内へSDGs意識を浸透させる場合も、環境リスクに配慮した事業を自社の活動に取り込む場合も、生産性向上のためテクノロジーへの対応を進める場合も、規模が大きければ大きいほど、経営層の考えや声は届きにくく、組織全体に行き渡るまでに多くの時間を要します。
その点について中小企業は大企業に比べて有利といえます。実際にSDGs意識を浸透させることや新しい取り組みを導入することは決して容易なことではありません。しかし、従業員との対話を重ね、目指す姿を組織全体で共有し、大企業では対応できないスピード感をもって変化に対応できることが中小企業の強みといえます。
顧客との密接性
産業が成熟するにつれて分業化が進んでいます。
大企業では組織の中で分業化、専業化を行うことで生産性を向上してきた歴史があります。産業を成長させ、経済を発展させてきた時代には素晴らしい組織戦略であったことは事実です。したがって、決して分業化、専業化が間違っているということではありません。
ですが、地域社会に根ずく中小企業では従業員ひとりひとりが事業にとってのキーパーソンであり、顧客に寄り添ってきた歴史があるでしょう。
これは中小企業と大企業との大きな違いと言えるでしょう。エンドユーザーや、サプライチェーンなの顧客と密接な関係を築いてきた中小企業だからこそ、課題の本質を見極めることができ、さらにはその課題を経営に取り込むことが可能です。顧客の課題に素早く対応できるということは、自社のサステナビリティ経営に対して大きなアドバンテージになります。
中小企業はイノベーションの原石
SDGs達成のためにイノベーションは必要不可欠です。イノベーションとは新しい技術による革新と誤解されがちですが、その実は「新結合」や「新しい捉え方」、「新しい活用法」により既存の製品・サービスにこれまでとは違う社会的価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革を指します。
地域社会に根付いて事業を行ってきた中小企業では、地域の特産品や地域資源を活用した伝統工芸など独自の技術を保有していることが多くあります。地球上の社会課題、環境課題を解決するために求められるイノベーション。どんな技術がどのような課題に寄与するか、それはアイデア次第です。
自社の持つ技術やノウハウを活かしたイノベーションのアイデアを考え、SDGsを追い風にすることでサステナビリティ経営へ確実に歩んでいけるでしょう。
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