企業レポート

統合報告書やサステナビリティ報告書をはじめとし、様々な様式で企業価値をステークホルダーに向けて発信する企業レポート。自社の持つビジョンや価値観を積極的に発信し、計画的で統合的な企業戦略を明示することは、自社の社会的価値を的確にステークホルダーへと伝え、サステナビリティ経営に向けた力強いツールとなります。

企業レポートとは?

内部、外部に関わらずステークホルダーに向けて組織自身が発信する企業レポートには様々は様式があります。
株主総会や金融機関、行政などに提出する事業報告書、新入社員の募集や顧客に向けたパンフレット、また組織内会報などは多くの組織で作成されているのではないでしょうか。

1990年代頃より、環境や社会課題が顕在化したことにより、上場企業を中心に環境報告書やCSR報告書といった企業レポートが発信されるようになりました。企業経営を行うにあたってこれらの課題に対しどのように取り組んでいるかを発信することは、自社の社会的評価に大きく関わっていたためです。2008年のリーマンショックを受け、より顕著に企業情報の開示を求めるステークホルダーの声が大きくなってきます。
これに伴い、環境課題や社会課題に対する現在までの取り組みだけでなく、これらの課題や発生しうる影響をどのように捉え、経営計画に織り込んで行くかといったサステナビリティ報告書や統合報告書が発信されるようになりました。これらは企業が社会的責任を持った経営により、ただ利益を出すという財務的価値だけでなく、社会にとって、世界にとって意義のある事業活動を行っているという非財務的価値を示してくれます。SDGsの採択により、直接的に利害関係のあるステークホルダーはもちろんのこと、社会全体としてこの非財務的価値が重要視されるようになっており、上場企業だけでなくあらゆる組織にとって企業レポートにより自社の価値を発信することが重要となっています。

企業レポートに関するフレームワーク

企業レポートにより自社の価値を発信するためには、統合性、網羅性、簡潔性、比較可能性などを意識する必要があります。これらはステークホルダーが企業レポートを見て企業の価値を図るためには必要不可欠なものです。
自社の内部情報のみに留まらず、環境課題や社会課題を含む外部情報まで織り込んだ上で、上記の性質を持つ企業レポートを作成することは簡単なことではありません。そのため、いくつかのフレームワークが存在しています。各フレームワークにより特色があるため、発信したいステークホルダーに向けて有効なフレームワークを活用して企業レポートを作成することが重要となります。

▶ 経済産業省「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス – ESG・非財務情報と無形資産投資 -」

経済産業省に設置された「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」における検討に基づき、2017年に策定された街談ダンスである。このガイダンスでは、企業と投資家が情報開示や対話を通じて互いの理解を深め、持続的な価値協創にむけた行動を促すことを目的とされている。
そのため、このガイダンスに期待される役割として以下の3項目が挙げられる。
① 企業経営者が自らの経営理念やビジネスモデル、戦略、ガバナンス等を統合的に伝えるための手引きとなること。
② 投資家が中長期的な観点から企業を評価し、投資判断やスチュワードシップ活動に役立てるための手引きとなること。
③ 上記の役割を果たし、企業の情報開示や投資家との対話の質を高めるための「共通言語lとして機能すること。

出典:「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス - ESG・非財務情報と無形資産投資 -(価値協創ガイダンス)」経済産業省(2017)

▶ SASB(サステナビリティ会計基準審議会)スタンダード

SASBは2011年に米国サンフランシスコを拠点に設立された非営利団体であり、将来的な財務インパクトが高いと想定されるESG要素に関する開示基準を設定することで、企業の開示情報の質を向上させ、投資家の中長期的な意思決定に貢献することを目的としています。
設立後、約6年の歳月をかけて企業、投資家、有識者を中心に分析と議論を重ね、2018年に11のセクター、77の業種に対して開示すべき情報をまとめたマテリアリティマップを作成、発表しました。
SASBスタンダードでは、各業種に対して財務指標にたいして影響を与える可能性が高い課題を特定し、それらを分析するための視点として5つの局面(Dimension)と26の課題カテゴリ(General Issue Category)にまとめられています。

>マテリアリティマップはこちら

▶ GRI(Global Reporting Initiative)スタンダード

GRIは1997年に責任ある環境行動原則への企業の開示情報をまとめるため設立され、その後の変革を受け、社会、経済、ガバナンスにも対応したESG関連情報開示におけるスタンダードとして発展してきました。
GRIスタンダードは共通スタンダードである「GRI 101,102,103」と項目別スタンダード「200,300,400シリーズ」から構成されており、企業レポートを作成する組織にとって重要な項目について該当するものを選択して使用することが可能です。なお、共通スタンダードは一般開示事項やマネジメント手法についての指針が示されており、すべての組織において適用することを求められています。
項目別スタンダードにおいて、環境、社会、経済に対する開示事項が網羅的に整理されており、ステークホルダーに向けて発信する場合でも社内の現状を把握するためのチェックリストとして使用する場合でも、とても有効なフレームワークといえます。

>こちらから日本語版のGRIスタンダードがダウンロード可能

▶ TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言

気候関連財務情報開示タスクフォースは気候関連のリスク及び機会を適切に評価し、格付けするために、投資家、金融・保険業界が必要とする情報を明らかにできるよう金融安定理事会(FSB)により設立されました。2017年に気候関連財務情報開示を行う企業を支援するための提言を行う最終報告書が発表され、日本でも経済産業省が「気候関連財務情報開示に関するガイダンス(TCFDガイダンス)」を公表するなど、世界各国で注目の高いフレームワークです。
また、一橋大学大学院 伊藤特任教授をはじめとする発起人により、民間主導のTCFDコンソーシアムが設立されワーキング・グループやラウンド・テーブルで活発な議論がなされています。2019年に「グリーン投資ガイダンス」、2020年には「TCFDガイダンス2.0」を策定するなど関係省庁と連携し国内における情報開示推進に取り組んでいます。

>TCFD提言(最終報告書)(日本語)はこちら
>TCFDコンソーシアムはこちら

▶ IIRC(国際統合報告評議会)フレームワーク

IIRCは2010年にA4S(The Prince’s Accounting for Sustainability Project)とGRIによって設立された、投資家、企業、会計専門家及びNGOにより構成される国際的な連合組織である。
IIRCは2013年に財務情報と非財務情報とを適切に関連付けた統合的な企業レポートのためのフレームワーク「国際統合報告フレームワーク」を発表し、以降、日本においても統合報告書の実践が進んでいます。
本フレームワークでは、統合された情報開示のみならず、その企業レポートを作成するプロセスを通じて組織内へ統合思考を浸透させ、企業価値の向上にも寄与することを目指しており、報告書作成に向けた指導原則や開示する内容要素に対するガイドラインを提示している。2021年1月には本フレームワークが改訂され、事業活動による価値創造プロセスの作成を助け、そのアウトカム、各種インパクト評価を行いやすくなっています。
国内の企業においては、本フレームワークをベースにTCFD提言に基づく気候変動シナリオ分析やGRIスタンダードに基づく海上情報の整理など複合的にフレームワークを活用した統合報告書が作成されています。

出典:国際統合報告フレームワークにおける価値創造プロセス(和訳) IIRC(2021)
トップへ戻る